研究概要 |
本研究では,宇宙構造材料として有望であるが高温での耐酸化性に問題がある炭素繊維強化炭素複合材(C/CComposite)とグラファイトを試験片とし,宇宙空間を模擬するスペースチャンバの中で高エネルギ原子状酸素発生源としてDCアークジェットを用い,材料劣化実験を行った.その結果,作動流体として流したアルゴンによる材料劣化への影響はほとんどないことが確認された.原子状酸素の照射実験により,グラファイトと比べてC/Cの質量損失は十分の一程度であり,電子顕微鏡により材料表面を観察したところ,C/Cを構成する炭素繊維が劣化しにくいためであることが分かった.グラファイトの質量損失は時間にほぼ比例するが,C/Cは時間に単純には比例せず,照射開始直後に急激に劣化することが分かった.そのため,酸素1原子あたりに減少する試験片体積を反応率と定義して照射時間をパラメータにとると,グラファイトはほぼ一定であるが,C/Cは反比例的な曲線状が得られた.また,C/Cの積層方向に垂直な面に照射した場合,積層面への照射と比べて3倍程度多い質量損失が測定された.照射面及びその断面を観察すると前者は劣化しやすいマトリックスが内部まで急激に消失し,繊維も先端から徐々に劣化するため,実験開始直後に急激に劣化するが後者は表面から徐々に劣化するため劣化速度が遅く,質量損失に大きな差が出ることが分かった..また,原子状酸素の照射速度を変化させて照射実験を行ったところ,速度の上昇とともに急激に質量損失が増加する結果が得られた.さらに,MTS高温万能試験機により,C/Cの破断強度及び弾性率を測定し,原子状酸素を照射した試験片では両者とも低下し,原子状酸素の照射により試験片の機械特性にも影響を与えることが分かった.
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