研究概要 |
本年度は交流インピーダンス測定と境界要素逆解析を併用して,単一の鉄筋を持つコンクリート試験片の鉄筋腐食を検出する方法の探求に焦点を絞った. これまでに開発してきた静的電位場を基礎とする境界要素法(BEM)腐食解析プログラムを拡張し,定常交番電位場解析を基礎とする交流インピーダンス法の境界要素順解析プログラムした.この順解析プログラムを利用して,単一の鉄筋を持つコンクリート試験片に対して,交流インピーダンス法のデータを入力とし,腐食部の位置および腐食速度を出力とする境界要素逆解析プログラムを開発した. これらのプログラムの基礎となっているラプラス方程式がコンクリート中で成立することを,鉄筋を含まないコンクリート試験片を製作し,その両端に電極を置いて交流を流し,試験片表面の多くの点における電位を測定することにより,実験的に検証した.同時にコンクリートの電気伝導度を計測した. 鉄筋の腐食部をむき出しの鉄短柱とし,非腐食部を絶縁物とするモデルを考え,コンクリート中にむき出しの鉄短柱を含むモデル試験片を製作し,交流インピーダンス法により試験片表面上の数点におけるインピーダンスを計測した.この計測値を入力として,上記の境界要素逆解析プログラムにより鉄短柱の位置と鉄短柱の複素をインピーダンス推定し,位置の推定値が実際の位置と良く一致することを確かめた. 以上の研究成果により,少ない労力・時間・熟練でコンクリート中の鉄筋の腐食を精度良く非破壊的に検出する方法を開発するための基礎固めができたので,研究成果をまとめて,機械学会で口頭発表し,full paperを腐食防食学会の論文集「材料と環境」に投稿した.
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