研究概要 |
本研究では,構造要素表面に存在する微細な損傷により励起される非線形表面波(高調波)を高精度で検出することにより,初期段階の材料劣化を検出し,その定量化を行うことを目的とする.本研究で得られた主な知見を以下に示す. 1.通常の圧電セラミックス超音波センサー,大振幅バースト波発生装置及びデジタルオッシロスコープを組み合わせる方法で,アルミニウム表面に垂直な模擬欠陥(平均開口量30nm)を通過する漏洩表面波波形のひずみを検出でき,FFT処理により2次高調波成分(10MHz)を検出できる.基本周波数成分(5MHz)に対する2次高調波振幅比の分解能は0.5%程度である.欠陥面に垂直な圧縮応力の負荷により高調波振幅比が減少すること,基本波振幅の増加に伴い高調波振幅が増大することが明かとなった. 2.表面に平行な剥離(平均隙間30nm)を模擬した厚さ0.3mmのアルミニウム板とブロックの重ねあわせ試験体を伝播する漏洩ラム波A0モードに含まれる2次高調波成分を上記と同様な手法で検出することができた. 3.大振幅入射超音波による連続体中に存在する微小開口き裂(10nmオーダー)の閉開口に伴う透過波の非線形挙動を解析する特殊要素を用いた有限要素法波動解析を行い,き裂開口量と入射波振幅,損傷域の広がり,波面とき裂面のなす角が2次高調波振幅に及ぼす影響を明らかにした. 4.表面に多数の微細き裂が存在するセラミックス試験片の漏洩表面波速度は高周波域での音速が有意に低下する顕著な分散性を示す. これらの特性を用いて,巨視き裂に発生する以前の表面微視き裂集団の検出が可能であることが実証された.
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