研究概要 |
本年度は,実機セラミックスベアリング材料として最有力であるHIP窒化ケイ素を中心に,球-平板接触下におけるき裂進展の様子を実験的に検討した.特に,30ミクロン程度の小さな初期欠陥からのき裂進展挙動の解明に重点をおいた.これにおよぼす諸因子の影響の解析を行うため,摩擦力ならびに実時間モニタリングを可能とした試験機を用いて,転がり疲労試験を行った.摩擦係数がほぼ0の転がりと球の動きを拘束したすべりの2条件で試験を行い,微小な初期欠陥からのき裂進展の観察を行った.また,内部方向へのき裂進展挙動ならびに分岐する様子の観察を,疲労試験を途中で中断して,縦割り断面観察により行なった.その結果,き裂の位置と方向によって進展挙動が異なること,また特に,表面近傍の接触領域の中央部分では,き裂が大きく進展するとともに,内部方向へも深く進展することが明らかとなった.また,内部では複雑な分岐挙動を示すことも明らかとなった.さらに,その結果を,Hansonによる接触応力分布の解析解に基づき,応力拡大係数によって評価し,観察したき裂進展挙動を検討した結果,表面近傍では,モードI進展すること,また,内部では圧縮応力下にもかかわらず,モードII進展する可能性のあることが明らかとなった.そこで,走査電子顕微鏡とレーザ顕微鏡によりき裂進展面の破面解析を行い,進展モードの同定を行ったところ,表面近傍では,モードIで進展するが,内部に進展するに従い,モードIIで進展することが明らかとなった.
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