研究概要 |
従来の光学的手法による三次元応力実験解析法(透過光弾性法,散乱光弾性法その他)においては,応力・ひずみの非対称面上で入射光の光路に沿って複屈折位相差を生ずるのみならず,偏光主軸の回転を伴うという解析上の本質的な困難がある.本研究は一般的な三次元応力・ひずみ状態を実験的に解析可能な手法を開発することを目的としている.以下に本年度の実績を簡略に述べる. 1) ジョーンズマトリクス・フーリエ偏光解析システムの構築---本補助金によって購入された冷却CCDカメラおよび負荷装置を組み込んで精細な偏光解析装置を構築し,複屈折位相差と偏光主軸方向のみならず,偏光の楕円率変化をも合わせて計測可能ならしめた.幾つかの基礎実験を通じて,斜め入射光による二次元応力場の評価を行ない,本手法によって複屈折位相差,主方向のみならず偏光の楕円率をも精度よく計測可能であることを明らかにした.本研究の最終年度に向けて,テンソル場CT法構築への基本的な実験システムが完成したことになる. 2) 散乱光弾性法の改善---従来の散乱光弾性法の適用はもっぱら応力・ひずみの対照面上に限定されてきた.本研究では,偏光解析におけるJones計算に立脚して,入射偏光角と観察方向角の6種類の組み合わせを用いて非対称面上の二次主応力差とその方向を決定する新しい実験手法を見出した.これら多数の画像データから的確に主応力差・方向をコンピュータ画像処理できる算法とシステムを構築し,種々の応用問題に適用しつつその有効性を検討した. 3)白色楕円偏光光弾性法---単一露光で得られるカラー光弾性画像から,二次元応力状態での主応力差および主方向を精度よく分離・計測可能な手法を開発して,現象の再現性が期待できない問題,すなわち粘弾性接触や粘弾性体中のき裂進展問題などを適用して,その有効性を確認した.特に,き裂進展現象の経時的追跡にはこの手法がもっとも有力であることを明らかにした.
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