研究概要 |
本研究は,ゆるみが発生しないねじ締結体を開発することを目的としている.これまでにステップロックボルト(SLB)と呼ぶつるまき線が階段状になった特殊なねじ形状を開とし,このSLBでは初期ゆるみ後はボルトとナットは相対回転をしないことを明らかにしてきた.本年度は,これまで試作しテストしてきたボルト(これを便宜上「旧 SLB」と呼ぶ)の諸元を最適化するために理論的基盤の構築と実験による確認を主たる目標とした.得られた知見および発表の概要を以下にまとめる. (1) 有限要素法を使ってねじ締結体のゆるみの要因を調べた結果,ゆるみの原因は主にねじのフランク面の最大傾斜線に沿ったボルトとナットの相対的なすべりであることが明らかになった. (2) 上記の作業はまだ続行中ではあるが,ねじのゆるみの原因がある程度特定できたので,任意の呼び径のSLBを設計できることとなった.そこで,新たに決定された諸元をもつSLB(これを便宜上「新SLB」と呼ぶ)の転造用ダイスを製作するための最適な工具を設計し,これを日電精密(株)で製作した.この工具を使って本研究室のマシニングセンターでダイスを切削加工し,これを(株)青山製作所で熱処理し,本研究室で検査し形状を確認した後,同社の転造機によって新SLBを製作した. (3) 一方,揺動型ゆるみ試験機(平成7年度に完成)において,締め付けトルクの変動を記録し,ゆるみ過程を観察するために,新たに独自のトルク計とビジョン・モニタリング・システムを開発した.これらについては平成10年7月にイギリスで行われた設計工学に関する国際会議『MID ユ 98』で公表した. (4) このSLBの開発理念を世に問い,「旧 SLB」の耐ゆるみ性能を公表するために,平成10年12月にインドで行われた工作機械と工具に関する国際会議『第 18回 AIMTDR』でこれをKeynote Lectureとして講演した.講演後多くの方々から,様々な貴重なご意見を頂くことができた.
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