近年、研削加工やミーリング加工では、BnC砥石やBnC焼結材を用いたエンドミルを使用することによって、切削液を用いないドライ精密切削を行い、クリーンでかつ高精度で高能率な加工を実現することが期待されている。本研究では、動圧効果を利用することなく高い剛性を実現し、低消費動力を可能とする軸受形式として、狭いランド部を持つ可変絞り型無限大剛性静圧ジャーナル軸受の適用を提案した。ここで提案する可変絞り軸受は、研究者がすでに提案している可変絞り要素を小型化することによって無限大の静剛性を達成し、かつ優れた動的応答性をも実現できる形式となっている。 さて高速回転用の軸受には2cSt程度の低粘度油を用い、軸受消費動力の上昇を防ぐのが一般的である。そこで本年度の研究では、まず低粘度油を用いた場合のマイクロ可変絞り静圧スラスト軸受の静的、動的特性を明らかにすることを試みた。その結果、(1).10cSt以下の低粘度油を用いた場合には、軸受すきま内や毛細管絞り内を流れる流量が大きくなるため、流体の慣性力の影響を無視できない、(2).慣性力の影響により、静剛性の値は多少低下する、(3).低粘度油を用いた場合でも、ステップ荷重に対して軸受は安定に動作することが明らかとなった。 次に、低粘度潤滑剤を用いた場合においても無限大静剛性を達成できるようにすめために、慣性力の影響を小さくできる軸受構造の検討を行った。その結果、これまで絞りとして用いていた毛細管絞りを多孔質絞りとすることにより、毛細管入り口で生じていたオリフィス絞り効果を抑制でき、無限大静剛性に近い値が得られることが分かった。このことをもとに、多孔質絞りを用いたマイクロ可変絞り型静圧スラスト軸受の静的、動的特性を理論的に求め、設計指針の確立を行った。さらに、マイクロ可変絞りを静圧ジャーナル軸受に適用するための軸受構造の検討を行い、その特性を理論的に求めるとともに、実験的にその有用性を確認した。
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