本年度の研究実績は以下のとおりである。 超音速流よう素レーザーの高効率化、小型大出力化には励起酸素とよう素の混合促進が不可欠である。しかし、その装置内流れ場は非常にレイノルズ数が低く、さらに超音速膨張は流れを安定化させるため混合は緩やかである。このような状態で混合を促進するため、現時点では円孔形状が採用されているよう素噴射口や、主流に垂直に噴射される噴流の装置形状に対して、ランプノズルと呼ばれる特殊形状ノズルを用いた平行噴射を想定し、これを装置に適用した際の混合及び反応特性、さらにはレーザー性能へ及ぼす効果を、数値解析により比較検討した。数値計算は、圧縮性ナビエ・ストークス方程式とよう素レーザーに関する21反応式から成る化学反応モデルを連立させ、時間積分にはLU-SGS法、空間差分には対流項に対しては高次精度化したHLLE法を、粘性項には中心差分を用いて定常解を求めた。結果として、今までの研究では指摘されていなかった、ランプノズルの誘起する縦渦が、この混合及び反応促進に対して重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、主流/噴流の混合状態を外部から制御する方法を探るため、よう素噴流を模擬した、主流中に垂直に噴射される噴流に対して、スピーカーによる噴流の音響励振をおこなった結果、特定の周波数-噴流流速領域において、噴流や反応帯が下流で分岐するといった大きな形状変化の生じる現象が初めて発見された。
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