研究概要 |
シャープターンをもつ矩形断面流路内の流れは,ターン通過時に遠心力の効果により二次流れが発生するとともに,ターン部の内壁先端(エッジ)で流れがはく離するため,3次元かつ非定常な特性を示す.そのため,従来の点計測法では流動の全貌を明らかにすることは出来ない.そこで本研究では,瞬時の流れ場を面計測することが可能なPIV法(粒子画像速度計測法)を応用して,流路内の複雑な流動特性を測定することとした.とくに,伝熱実験と同じ条件で速度計測を行うために,従来は難しかった空気流に対してPIV法を適用し,熱と運動量輸送のメカニズムの解明を試みた.PIV法としては,2台のシート状レーザー光源とクロスコリレイション・カメラを同期させ,数十μ秒の時間間隔で撮影した2枚の画像の相互相関から速度を求める2画像相関法を採用した. まず空気流の計測に適したシード粒子を検討・選定するために,単純な直線流路において測定を行った.その結果,プロピレングリコールを加熱して得た微小粒子をシードした場合に,主流速度に関して良好な精度が得られることが判明した.次に,はく離や逆流を伴う流れへの有効性を検討するために,詳細なデータが公開されているバックステップ流の測定を行ったところ,主流速度のみならず断面内速度,変動速度強度,乱流応力の測定値に対しても,ここで採用したPIV法は高い信頼性を有することが確認された.以上の結果を踏まえて,180度シャープターンをもつ矩形断面往復流路のターン部分において流れ場の測定を行うとともに,熱(物質)伝達実験も行い両者の関係を比較した.その結果,ターン部分の内壁先端における流れのはく離・再付着,コーナー部での再循環,流路壁への衝突の状態が明らかになるとともに,これらの流動特性が局所伝熱特性と極めて良く対応することが見出された.
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