研究概要 |
(1) 「密度成層乱流」の直接数値シミュレーション 並列型スーパーコンピュータを用いた大規模直接数値シミュレーション(DNS)により,安定および不安定成層下で生じる内部重力波やサーマルプルームの発生機構を調べるとともに,これらのマイクロスケールの運動と大気および海洋乱流との相互作用の影響について検討した。本研究では,非線形効果の大きい乱流を扱いかつ浮力という体積力の効果に着目し,ハードウエア的限界まで,高レイノルズ数・高浮力の大規模計算を行った。その結果,回転と浮力の作用により回転軸方向にコラムが生成されること,また,このコラム生成には非線形作用が大きく関与していて,地球物理学でよく用いられるいわゆる地衡流近似には限界があることが明らかになった。この成果は,海洋および大気の流体力学的性質を理解する上で基礎となるものである。 (2) 「熱輸送を伴う接地境界層乱流」のモデリング サーマルプルームや内部重力波がどのようなメカニズムで発生するのか,また,現実の気象現象により近い高レイノルズ数や高浮力条件の下では乱流とどのように相互干渉するのかについては不明であり,その数理モデルもまだない。このような数理モデルの基礎となるものは,これまでの地球流体力学,気象学,海洋学などの分野で確立されていない接地境界層に対する乱流モデルである。本年度はこの課題に着目し,計算負荷がより小さい低レイノルズ数型1方程式乱流モデルを開発した。開発した乱流モデルには,地球表面からの熱伝達,流れの圧力勾配の影響、流れの剥離・再付着という重要な熱・流体工学的諸因子が組み込まれている。
|