研究概要 |
インピンジメント冷却の特性制御および性能向上のために,衝突噴流により生成される大規模縦渦ならびに自励音響振動の利用を考えた.その際,(1)噴流ノズルの幾何形状,(2)自励振動の周波数,(3)渦構造の変化,に注目し,ダイナミックな伝熱制御を行うことを目指した.また,噴流どうしの干渉を調べるとともに,各実験で必要な測定手法についても改善を加えた.既存装置を利用してテストセクション部を組み込み,上述の(1,2)に応じた噴流ノズルを脱着できるようにした.(3)の渦構造観察では,既存の二次元レーザードップラー流速計を用いた局所二方向速度成分ならびにその変動成分の計測を行ったが,広範囲な断面内速度分布を測定するため,パルスレーザーを含むPIV装置も利用した.また,伝熱板に塗布した感温液晶の温度による変色をCCDカメラに収録し,その色情報からニューラルネットワークを応用した画像処理による温度への変換を行った.自励振動は圧力センサー,熱線風速計,FFTアナライザーを組み合わせてスペクトル解析を施した.結果として,流れに対し噴流を斜めに吹き込むと大規模なスケールの一対の縦渦が観察された.この渦対は実験と並行して行われた同様に系に対する三次元数値解析によってもシミュレートすることができ,従来からの垂直噴流冷却に対する斜め噴流の構造上の相違点,優位性が明らかになった.自励振動の影響については,発生しない場合と比較することにより,両者の流動様式および衝突熱伝達特性の違いを明らかにした.この振動は外部からのエネルギー供給を必要としないが,ノズル先端部のカラー部長さを若干調整しなければならない.しかし,そのことを熱流動場に対する影響はほとんどなく,むしろ音発生の有無が噴流構造,衝突熱伝達率に大きな影響を与えていることが分かった.発生音の周波数を基準にとったストローハル数が約0.3の場合にそれが最も顕著であった.
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