本研究ではBWR型原子炉燃料棒支持に使用されているスペーサの一つである丸セル型のものを模擬した円筒型の障害物を環状流路内に設置し、その近傍の加熱された表面上でのドライパッチの生成の状況を高速度カメラを用いて詳細に観察し、同時にスペーサ近傍の加熱表面温度の時間的変動を管軸方向に異なる6断面で計測した。その結果以下のことが明らかになった。 1. スペーサが無い場合、(1)6本の熱伝対取り付け範囲で場所による管壁面平均温度の差がほとんどない。それらの温度は熱流束の増加に従って増加するが、流動様式が気泡流からスラグ流へ遷移する熱流束の範囲で大気泡のかく乱効果で平均温度が低下する。(2)温度変動量は熱流束の増加に従って増加し、気泡流領域では振幅が1度程度であるが、熱流束が上がってフロス流となると5度程度と増大する。 2.スペーサが取り付けられている場合、(1)管壁面平均温度は熱流束に関わらずスペサーに近付くに従い低下し、スぺーサ隙間内ではさらに低下する。このことはスペーサに管を冷却する効果があることを意味する。スぺーサ下流では温度はどの熱流束の場合にもスぺーサがない場合のそれより低く、かつその他の場所とは異なる挙動を示し、この領域がその他の領域とは管の冷却機構を異にすることを意味している。(2)液膜のドライアウトが発生する過程と壁面温度変動の対応の詳細な観察によれば、ドライアウト寸前のように液膜が非常に薄くなると熱伝達係数が増大し発熱管外表面温度は低下する。しかしその直後に液膜が破断しドライアウトが発生すると逆に急上昇する。(3)熱流束が高くなって、流動様式が環状流になると、じょう乱波に挟まれた薄い液膜が存在する間に液膜は消失し、じょう乱波の通過によって再び液膜が管壁に形成される。したがって壁面温度の時間的変動が大となり、振幅は10度近くに達する。
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