研究概要 |
水の液相と非水溶性ゲスト物質の液相との界面に沿って形成される膜状水和物層,水溶性ゲスト物質の化学量論的水溶液(水和物の理論的組成と同一組成の水溶液)内部から生成する水和物相のそれぞれを対象に,実験的・理論的研究を進めた.各項目ごとに実施した研究の概要を記す. 1. 水和物層厚さ測定に関する実験:膜状水和物層を内部に保持する耐圧光学セルとレーザー光干渉計を含む実験装置を完成させた.交付申請書の段階ではレーザー光源としてHe-Cdレーザーの使用を予定していたが,より波長が短く耐久性にも優れた全固体青色SHGレーザーを購入して光学系に組み込んだ.現在,HFC-134aと水の二液相界面に生成させた水和物膜の厚さ測定を現在進めており,温度および水和物膜形成後の時間経過に伴う特異な厚さ変化が見出されている. 2. 水和物層の顕微鏡観察:透明な二平板間の狭隘水路中に盤状のHCFC-141b液滴を保持し,その周囲に形成されるリング状水和物層を高倍率の顕微鏡により観察した.さらに,水和物層周囲の水流を二次元眉流と仮定し,水和物層表面から水流中へのHCFC-141bの溶解に関する局所物質伝達率を算出した.観察された水和物層は物質伝達率の増大に伴って薄くなることが確認された. 3. 水和物層を介しての熱・物質移動のモデリング:先に申請者らが提示した物質移動モデルを基礎に,水和物層両表面での放熱・吸熱に起因する熱移動を考慮に入れた数理モデルを作成した.その妥当性については今後検討を進める. 4. 水溶性ゲスト物質による水和物の生成・分解実験:テトラヒドロフランの水溶液からの水和物相の生成・成長と分解の挙動観察のための実験装置を製作し,予備的な実験を行った.
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