研究概要 |
高齢者は加齢によって関節の可動域の現象,反射能力の衰え,視力の衰えが目立つようになることがわかった.地方都市においては,公共交通機関の発達が遅れているため,自動車の依存度が高い.したがって,加齢による運転の断念は,高齢者の外出頻度を低くする.外出頻度と生活充実度には明らかな相関が見られ,高齢者の生活充実度の水準を保つためには,モビリティの確保が重要であることがわかった.そこで,タウンモビリティ実験を行い,タウンモビリティにより高齢者のモビリティが向上することがわかった.また,30km/h程度の低速度車両は居住地から繁華街へのアプローチとして有効なものであることが示された.免許を保有し,自動車の運転に不安を感じている高齢者を対象に、シルバービークルを提案し,その機能と構造について検討を行い,諸元を決定した.その諸元を元に,最高速度や一充電走行距離などの性能予測を行ない,プロトタイプ車両の製作を行った.完成車両を高齢者に試乗してもらい,乗り込み動作,運転中の緊張度,操作履歴について解析し,性能評価を行うと共に改善点を見出した.改良を行い,高齢者に試乗してもらった結果,高齢者用車両として適切であるという結論に達した.高齢者が安全かつ快適に生活することが可能な街づくりとは,「ドアツードア」に近いモビリティの確保が可能な街であり、それを日本で実現するための形の一つとして,住宅地ではゾーンシステム,商店街ではタウンモビリティが実施された街が挙げられる.低速車両専用道路のネットワーク形成とシルバービーグルの利用が高齢者との共生を目指したシステムの理想形の一つであるという結論に達した.高齢者が積極的な外出を行える社会が形成できれば,高齢者のQOLの向上をもたらすことができると考えられる.
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