研究概要 |
本研究は,力覚人工現実感技術を用いて熟練者の技能を解析し,伝達するための方法論を確立することを目的として実施された.すなわち,組立作業や習字などの,手先運動と手先力を必要とする技能を,力覚人工現実技術により構成した仮想世界で遂行するシステムを構築することにより,技能の定量的な「解析」を行うための方法論を確立し,また熟練者から非熟練者への「技能伝達」を行うためのシステムの開発とその理論的考察を行うことを目指した.本年度の研究成果の概要は以下のとおりである.(1)関節バネを持つ提示装置による提示安定性の向上:技能の解析と提示のためには力覚提示装置の性能向上が不可欠である.これまでに開発されてきた能動型力覚提示装置に共通する問題点の一つとして,安定性を保ったまま高剛性の仮想物体を提示することの困難さが挙げられる.本研究では,この問題に対して従来のソフトウエア的解決策とは異なり,ハードウェアのバネを用いて連続値的に反力を発生させることにより,サンプリング間隔の長いシステムにおいてもより高剛性な静的仮想物体を表現する手法を提案し,実験的に検証した.(2)指先圧迫機能を付加した力覚提示装置の開発:効率的な動作教示のためには,教示動作の位置と力の両方の情報を提示することが必要であるが,従来の装置では,これらの情報を同時に提示することはかなり困難である.本研究では,上記の問題点を解決するために,指先装着型の力覚提示用リンク機構の手先部分に,使用者の指先を圧迫する機構を付加することによって,位置情報をリンク機構の部分により,また力情報(指先で物体を押し付ける力)を指先圧迫機構の部分により提示する装置を提案した.また上下方向1自由度の位置提示機能と指先圧迫機能をもつ簡単な提示装置を試作して実験を行い,その有効性について基礎的な検討を加えた.
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