研究概要 |
複雑な形状を持つマイクロマシンを作製する場合の加工技術としては,微小な構造を持つ部品の作製だけではなく,多様な材質の部品を接合し集積化する技術が必要である。そのようなマイクロマシン接合技術の一つとして陽極接合法が知られているが,これは使用する材料に制約があり,また400℃程度の高温で高電圧をかける必要があるなど,問題点が残されている。本研究は,材料の表面を化学修飾して化学結合力を利用して材料を接合する方法論の開発を目指している。本年度は,ガラス基板上にポリイオン集積化膜を形成させ,反対電荷を有する表面を静電的に接合する技術の開発を中心に研究を進めた。まず,ポリイオン高分子をガラス基板上に固定化するために,分子末端にアミノ基を有するシランカップリング処理剤を用いてガラス基板表面を化学修飾した。反応後,基板を塩酸処理し,化学修飾したシランカップリング処理剤の末端のアミノ基が正電荷を持つようにした。その表面に負電荷を有するポリイオン高分子(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム,PSS)を積層するため,PSS水溶液にシランカップリング処理したガラス基板を浸漬し,洗浄した。さらに,反対電荷を有するポリイオン高分子(ポリエチレンイミン,PEI)水溶液にガラス基板を浸漬し,表面を正電荷にした。 このようにして得られた表面がPEIで処理されたポリイオン集積化膜は,負電荷を表面に有する微粒子を効率よく捕捉することが可能であったが,PSS(負電荷)で処理された表面では捕捉することができないことが示され,化学的手法によりガラス表面の電荷を制御できることに成功した。今後,反対電荷を有するガラス基板を接合することを試み,その接合力についても定量的に評価していきたいと考えている。
|