研究概要 |
複雑な形状を持つマイクロマシンを作製する場合の加工技術としては,微小な構造を持つ部品の作製だけではなく,多様な材質の部品を接合し集積化する技術が必要である。そのようなマイクロマシンの接合技術の一つとして陽極接合法が知られているが,これは使用する材料に制約があり,また400℃程度の高温で高電圧をかける必要があるため,酵素を利用するバイオセンサーなどには不適当である。本研究は,材料の表面を化学修飾して化学結合力を利用して材料を接合する方法論の開発を目指している。今年度は,昨年度確立したガラス基板表面修飾技術を用いてガラス基板同士の室温接合を行い,その接合力を引っ張り試験器を用いて測定した。また修飾したガラス表面の分光学的評価を光スペクトラムアナライザを用いて評価した。 最初に,表面に負電荷を修飾したガラス基板と正電荷を修飾したガラス基板とを直接接触させることによって接合を試みたが,これでは接合力がほとんどなかった。そこで,接合面をはさんでその両側から1000VI以上の高電圧を引加したところ,接合が確認された。さまざまな条件下で試みた結果,接合には基板表面の電荷と加える電圧の両方が必要であることが明らかになった。接合力は接合直後には約100kPaであり,陽極接合に比べると弱いものの,用途によっては実用的である。また,接合力は時間経過とともに弱くなり,約1週間後にはほぼ0となった。接合力を失って剥離した基板は,同様に処理することにより再接合することが可能だったので,流路等を加工した基板を有効に再利用することができる。
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