研究概要 |
「多数の参入者が共存する電力システム」では、参入者はそれぞれの利潤を最大化するような複雑な経済行動をとる。電力システムでは電力品質を維持しつつ、複雑な電力取引を物理的に実現しなければならない。本研究では、通常運用時の電力取引の実現手段、緊急事態が予見されるとき電力システムの生き残りをかけた電力取引削減のための予防処置、信頼度維持に必要な参入者間の責務分担の仕方,ゲーム理論における参入者間の結託あるいは提携が信頼度に及ぼす影響などを明らかにすることを目的にして研究を行った。得られた主要な成果は以下の通り。(1)多数の参入者が共存する電力システムの信頼度維持を検討する場合、競争市場との共生を目指す必要がある。前年度に、新たな電力産業の事業体制の中で信頼度評価に必要な要件、それぞれの参入者の信頼度に関わる貢献について検討して、その成果を、1999年6月にロンドンで開催されたCIGREのシンポジュームで報告した。(2)多数の参入者間の電力取引を処理するために、指定した電力ソースから指定した電力シンクに向けて、電気エネルギーを輸送する電力フロープロセスを検討して、その成果を、1998年12月と1999年12月の電気学会B部門誌に発表している。(3)多数の参入者が共存する電力システムの信頼度評価について検討を進め、参入者間の提携行動、結託行動について、明確な考え方を提示して、モデルによる評価を例示した。その成果を、2000年11月に大阪で開催されたPSAM5のシンポジュームで報告した。(4)多数の参入者の利己的な行動による複雑な電力フローが電力ネットワークにストレスひきおこし、信頼度劣化をもたらすメカニズムを分析した。米国東部地域やカリフォルニアにおける電力危機や都市域の局所的な電力不足の背景を調査して、問題解決の方向として信頼度マストラン発電機の役割などを分析した。(5)オブジェクト指向の電力の固まりが流れている電力システムの信頼度維持と電力品質の問題を扱うため、前年度ワークステーションを用いたクライアントサーバーネットワークを構成したが、本年度はさらに多数の参入者が共存する電力システムをシミュレーションするためにクライアントターミナルを増設して研究を進めた。
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