研究課題/領域番号 |
10450120
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
塩嵜 忠 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (80026153)
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研究分担者 |
堀内 俊寿 京都大学, 工学研究科, 助手 (10238785)
岡村 総一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (60224060)
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キーワード | 強誘電体不揮発性メモリー / Pb(Zr,Ti)O_3 / 分極反転疲労 / インプリント / 空間電荷 / マイクロクラック |
研究概要 |
強誘電体薄膜を用いた不揮発性メモリーの研究が盛んに行われており、低集積度のものは一部実用化されている。しかし、より高集積度・高信頼性のメモリーを実現するためには、強誘電体の更なる薄膜化とそれに伴い顕著に生ずる諸問題を解決しなければならない。膜厚が数百nm程度となると、薄膜の特性は基板、下部電極、上部電極、界面、粒界の影響を受け、残留分極量が低下したり分極反転疲労特性、分極保持特性、インプリント特性等のエージング特性が劣化する。そのメカニズムについては幾つかのモデルが提唱されているが、未だ決定的もなのはなく、特性改善に関しても暗中模索の段階である。そこで、本研究においては、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法や化学溶液堆積(CSD)法によりチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O_3;PZT)を始めとする強誘電体薄膜を作製し、その特性をさまざまに評価することで特性劣化の原因について考察した。その結果、疲労特性やインプリント特性の原因につては、膜中の酸素空孔等の欠陥が電界や自発分極によって移動し、界面や拉界でトラップされて空間電荷分布を形成することによりヒステリシスのシフトや残留分極の低下が見られるとの結論を得た。熱刺激電流の測定では、そのトラップ準位から放出された電荷によると思われる電流が観察されており、これらは「ドメインピニングモデル」を裏付ける結果と言える。一方、CSD法で成膜する場合、薄膜化ならびにプロセスの省力化のためには、1回のスピンコート・熱処理で成膜することが望ましいが、これまでそういった膜ではリーク電流のため特性が評価できなかった。原子間力顕微鏡(AFM)観察により、その原因が膜中のマイクロクラックであることを突き止め、マイクロクラックを埋めるプロセスを導入することにより、厚さ100nmでも良好な強誘電性を示す薄膜を作製することに成功した。
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