Si(001)に様々な量の0.5keVB^+イオンを注入して、その非晶質化過程をチャネリング法を援用した高分解能RBS法で調べた。また、イオン注入時の注入イオンの深さ分布と、注入により生じる格子欠陥の分布を、TRIMコードにより計算して高分解能RBS/チャネリングの測定結果を比較した。その結果、イオンの飛程や欠陥分布のピークから非晶質化が生じる高エネルギーイオン注入時と異なり、表面(正確には膜厚約1nmの自然酸化膜と結晶シリコンの境界)から非晶質化が進行することがわかった。また、非晶質化が始まる注入量のしきい値は約1×10^<15>cm^<-2>であった。この値は、TRIMコードで計算したしきい値よりも低いことがわかった。同様の結果が、5keVSi^+イオン注入によっても確認された。(Nucl.Instr.and Meth.B148(1999)284)また、自然酸化膜の酸素分布がイオン注入によって、シリコン内部にずれることが観測された。これらの結果から、観測された異常表面非晶質化は、自然酸化層中の酸素原子が注入イオンによって反跳を受け、自然酸化膜と結晶シリコンの境界付近に移動し、その付近の結合強度低下させるため、欠陥発生が促進される可能性と、注入イオンによって作られた格子欠陥が、自然酸化膜と結晶シリコンの境界の欠陥に対するシンクとしての作用のため、欠陥が境界付近に移動して非晶質化が促進された可能性が考えられる。
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