シリコン/シリコン酸化膜系ダブルバリア構造を用いた量子デバイスを製作するため、シリコン表面に高絶縁性および高信頼性の極めて薄いシリコン酸化膜を形成する熱酸化プロセスを開発している。水素終端表面シリコンの昇温速度と酸素濃度を制御して、900℃の所定の熱酸化温度で形成される酸化膜の厚さに対して900℃までのウェハ昇温過程で成長する酸化膜の厚さの比率が小さい極薄シリコン酸化膜を形成すると、極薄シリコン酸化膜を用いた金属・酸化物・半導体(MOS)ダイオードのリーク電流を低減でき、トンネル電流の制御性が向上することを明らかにしている。さらに、エネルギバリアを連続階段近似して電子トンネル確率を計算し、デバイスの電流-電圧特性を計算するために開発したシミュレーションプログラムを用いて、MOSダイオードの電流-電圧特性を従来より高精度でシミュレーション解析を行い、昇温速度を50deg/secとして酸素ガス雰囲気中で900℃の熱酸化により形成した極薄シリコン酸化膜のトンネル電流特性の酸化膜厚さ依存性から、酸化膜が薄くなると酸化膜の電子トンネルに対するエネルギバリア高さが低下していることを明らかにしている。また、縦型シリコン/シリコン酸化膜系ダブルバリア構造を製作するため、極薄シリコン酸化膜を介したシリコンウェハとシリコンウェハの張り合わせおよび接着技術を開発し、極薄シリコン酸化膜を埋め込み酸化膜としたシリコン・オン・インシュレータ構造を実現している。
|