研究概要 |
1.Xe添加効果を抽出するために,添加ガスとしてArを用いたものと比較検討を行った.CH_4/H_2系マイクロ波プラズマCVDにArを添加した場合も,プラズマ電子密度の増加,堆積速度の向上がみられたが,ダイヤモンド堆積膜の評価により,非ダイヤモンド成分の増加が確認された.これはXe添加の場合は低下したプラズマ電子温度が,Ar添加の場合は増加したことと関連している.Ar添加の場合,非ダイヤモンド成分の原因になるCH_2ラジカルの生成を行うのに対し,Xe添加の場合は,ダイヤモンド成長に必要なCH_3ラジカルを選択的に生成することが明らかとなった.これにより,Xe添加により,プラズマ損傷を抑制した高品質ダイヤモンド薄膜の作製に成功した.フッ化物薄膜をゲート絶縁膜に用いることにより,ピンニングのみられない良好な変調特性のダイヤモンドMISFETの作製に成功し,Xe添加によりトランスコンダクタンスの向上を確認した. 2.ダイヤモンドMISFETの特性向上にあたってはゲート絶縁膜とダイヤモンド表面との界面物性の解析が不可欠である.フッ化カルシウムゲート絶縁膜とダイヤモンド表面との反応の解析にあたってはX線光電子分光法(XPS)を用いて評価を行った.水素終端ダイヤモンド表面にフッ化カルシウムを真空中,基板温度500℃にて電子ビーム蒸着法により堆積した場合,同条件でチッ化カルシウムを堆積した場合に比べて,ダイヤモンド表面のXPSC1sピークがより高エネルギー側にシフトすることが明らかとなった.これは,フッ化カルシウムを堆積することによりダイヤモンド表面のフッ素化が進行し,これによりダイヤモンド表面が下向きにバンドベンディングしたことによると考えられる.また表面のフッ素化の程度は,ダイヤモンド表面の終端原子種に依存することが明らかとなった.
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