研究概要 |
si重子ドット(QD)をフローティングゲートとして絶縁膜中に埋め込んだMOS構造は室温でメモリ機能を有する。昨年度までに,室温,ゲート電圧OVでドット当たり電子約1個が安定に保持されること,フラットバンド電圧シフト軍と保持電荷量との関係にドット特有の効果が現れることなどを明らかにした。また,表面を熱酸化したSiQDの室温における高効率発光が局在準位を介した再結合に起因することを明らかにした。本年度は,主として,SiQDフローティングゲートMOS 構造を作製し,メモリ機能とドットへの電子の注入・放出特性を調べた。ゲート長1μm以下のSiQDフローティングゲートMOSトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性において,ドットへの電子注入によると解釈できる顕著な電流減少とヒステリシスが観測された。また,ドットから電子放出した後,ゲート電圧を一定値(正)に保持した状態でドレイン電流の時間変化を測定した結果,ドレイン電流の多段階的な減少が観測された。これは,SiQDフローティングゲートへの電子注入が段階的に起こることを示しており,ドットの帯電状態は準安定状態を経て最終安定状態に達することが分かった。更に,ドットへの電子注入特性を明らかにするため,ゲートにパルス電圧を印加し,ドレイン電流の過渡特性を測定した。その結果,ドットへの電子注入がゲート電圧に対しても多段階的に起こることが分かった。この多段階的変化は帯電したドット間のクーロン相互作用に由来することが示唆された。本研究により,高密度形成したドット凝集体系の電子物性は,ドットの形状やサイズ分布及びドット間の相互作用に大きく影響されることが明らかとなった。
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