本研究では、研究代表者らが開発した水素終端ダイヤモンド表面伝導層を用いた、表面チャネル型ダイヤモンドFETの特性向上を行い、高耐圧・高周波でのデバイス動作を実現することを目的とする。本年度においては、現段階において作製が容易かつ結晶性が高いホモエピタキシャルダイヤモンドを基板に用いて、FETの作製および評価を行った。これにより素子の特性の改善と高周波特性において著しい成果が得られた。 具体的には、 1.ダイヤモンドFETの作製にメッキプロセスを導入し、世界で初めてダイヤモンドFETにおける高周波特性評価を行った。2μm CuゲートMESFETにおいては、70mS/mmの高い相互コンダクタンスが得られ、2.2GHzの遮断周波数と7GHzの最大発振周波数が得られた。 2.CaF_2膜をゲート絶縁膜に用いたゲート長1.2μmのMISFETをセルフアラインプロセスを用いることによって作製した。このMISFETにおいて最高で90mS/mmの高い相互コンダクタンスを示すFETが実現した。なお、水素終端ダイヤモンド-CaF_2界面の低い界面準位により、SiC-MOSFETより2倍以上の高い値となる250cm^2/Vs以上のチャネル移動度が得られている。また、ゲート絶縁膜を挿入する効果によって単位面積あたりのソース・ゲート容量がMESFETの半分に低減した。これによって、1μmゲート長のMISFET(40mS/mmの相互コンダクタンス)において4.6GHzの遮断周波数と11GHzの最大発振周波数が得られた。ソース・ゲート容量はゲート長の微細化に伴って低減しており、我々の技術を用いて実現が可能である0.5μmゲート長で100mS/mmの素子においては、20GHzを超える遮断周波数が得られると予想される。 3.1μmゲート長のダイヤモンドMISFETにおいて小信号等価回路シミュレーションを行い、ダイヤモンドFETにおける等価回路パラメータを抽出した。これにより、ソース・ドレイン、ゲート・ドレイン等の容量が他の材料と比較しても低いことがわかり、ダイヤモンドの高周波素子としての優位性が示された。
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