研究概要 |
ニューラルネットワークとの融合が期待される生体情報処理手法の一つである遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)を基本とした集積回路とその耐故障性について,評価検討した.このアルゴリズムを集積回路化することで,従来手法とは全く異なった設計手法,アーキテクチャに基づくハードウェアが構成できると考えられる.さらに,従来のプロセッサのような中央演算装置に依存する構造が不要であり,かつ,分散並列を基本としたアーキテクチャが可能となると考えられる.これより,集積回路の一部に故障があっても,回路全体としては正しい答えを出すことのできる耐故障性の高い集積回路が期待できる.この集積回路のパターン認識への応用を検討し,以下の設計手法を提案した. 1)遺伝的アルゴリズムを用いて,対象とする認識問題(タスク)のサンプルパターンの一つ一つに対して最適な核関数を形成する. 2)核関数は単純な組み合わせ回路で形成できるので,各サンプルパターンから形成される核関数を回路化して統合することにより,単純な組み合わせ回路だけからなるパターン認識用回路を形成できる. 本手法をいくつかの実応用問題用に適用し,再構成可能集積回路(Field Programmable Gate Array)を用いて試作評価した.その結果,汎用プロセッサによる従来パターン認識アルゴリズムの処理時間に比べて1万倍以上高速な処理が可能であることがわかった.さらに,回路上に故障を発生させるシミュレーション実験によれば,10%程度の回路故障であれば,故障が無い時とほぼ同等な認識性能が得られることが分かった.また,回路故障に伴って,徐々に故障が劣化する Graceful Degradationが観測された.これより,生体の持つ耐故障性を反映したロバストなパターン認識用集積回路が実現できる見通しを得た.
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