CdF_2/CaF_2ヘテロ構造による共鳴トンネルダイオードをn-チャネルSi-MOSFETのコンタクトホールに直接埋込成長し、Si集積回路へ集積化することを最終目的として研究を行った。具体的には、Si基板表面の熱酸化によるフィールド酸化膜にフォトリソグラフィでコンタクトホールを形成し、そこにリンを高濃度に選択イオン注入して活性化し、CaF_2/CdF_2/CaF_2の二重障壁共鳴トンネル構造を分子線エピタキシー法で成長した。これをAl電極で埋め込み、プレーナプロセスによる弗化物共鳴トンネルダイオードを形成した。 まず、高濃度イオン注入を行ったSi表面の原子層オーダーの荒れについて検討し、イオン注入後の表面酸化が顕著な荒れを引き起こすことを明らかにした。これに対応するプロセスとして、イオン注入後に窒素雰囲気中でプレアニールをしてから、超高真空中で活性化を兼ねた加熱クリーニングを行ってから弗化物ヘテロ構造を続けて成長するプロセスを考案した。 以上の結果、コンタクトホール中に埋め込まれたAl/CaF_2/CdF_2/CaF_2/n^+-Si構造の共鳴トンネルダイオードで室温でピーク電流/バレー電流比が2.5の動作を得ることができた。また、基板面および第1層のCaF_2層の平坦化の条件を明らかにした結果、素子の歩留まりも従来より飛躍的に向上した。これらの結果から、目的としたSiデバイスとの集積化を可能とした。
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