研究課題/領域番号 |
10450139
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松山 公秀 九州大学, 大学院・システム情報科学研究科, 教授 (80165919)
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研究分担者 |
能崎 幸雄 九州大学, 大学院・システム情報科学研究科, 助手 (30304760)
中司 賢一 九州大学, 大学院・システム情報科学研究科, 助教授 (50237252)
浅田 裕法 山口大学, 工学部, 助教授 (70201887)
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キーワード | 巨大磁気抵抗効果 / 磁性薄膜 / スピン依存型電子散乱 / スピンバルブ |
研究概要 |
スピン偏極電子の輸送特性を利用した新しい機能デバイスの実現に向け、強磁性金属、酸化物半導体などの異種材料からなるハイブリッド人工格子膜を作製し、その構造解析、磁気および電気伝導特性評価を行い、以下の成果を得た。 1)三元マグネトロンスパッタリング装置を用いてガラス基板上にCo-Pt/TiO_<2-x>/Co/TiO_<2-x>/Coを成膜し、Arイオンミリング法により接合面積20μm^2のCPP(Current perpendicular to plane)スピンバルブ素子を作製した。TiO_<2-x>膜は、酸素を導入しながら反応性スパッタリングを行い、酸素欠損に伴う半導体特性の低下を抑えた。さらに、素子の2重障壁構造化により、TiO_<2-x>膜厚を2nmまで薄くした素子に対しピンホールなどによる電気的短絡のない膜面垂直方向の半導体的伝導特性を実現した。極低温磁気抵抗装置を用いて電気伝導特性の温度依存性を調べた結果、作製した素子は9.5x10^<-3>eV程度の活性化エネルギーを伴う熱活性型の電気伝導特性を有することが分かった。 2)上記により作製した素子は、CPP伝導路において室温で0.28%の負の磁気抵抗効果を示した。さらに、CPP伝導障壁として酸化物半導体TiO_<2-x>を用いることにより、Al_2O_3などの絶縁膜の障壁を有するトンネル型CPP素子に比べて小さい接合抵抗20Ωμm^2を実現した。したがって、本素子の半導体層厚をトンネル伝導領域までさらに薄くすることができれば、低抵抗、高MR接合の実現も可能であると考えられる。 3)Coの膜厚および成膜条件を最適化することにより、島状構造を有するCoグラニュラー膜を中間層とするCPP素子の作製に成功し、120Kで0.59%のスピン依存型磁気抵抗変化を得た。今後は、バイアス電極を付加することにより、帯電効果による単電子トンネリングの制御を可能にしたスピンデバイスについても検討を進める予定である。
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