研究概要 |
本年度に実施した内容およびその成果は次のとおりである. 1. 平面衝撃波の問題を取り上げ,非線形性を粒子速度依存の形で体積弾性率の中に取り込む従来の近似理論の考え方を,本研究の基本式の体積弾性率に用いる方法を検討した.その結果,本研究の基本アルゴリズムの正しさが確認されると同時に,多くのテキストに書かれている近似理論式が現実の現象を反映していないことが明らかになった. 2. 次に実際の衝撃波結石破砕動作と同じ状態を水媒質中で実現する3次元の衝撃波発射モデルとして,これまで報告されている実験例の中でとくに音圧測定結果が詳しく示されているReichenbergerの電磁的衝撃波発射装置の例を取り上げ検討した.まず非線形性をスカラー体積弾性率の中に直接取り込む方法は全く間違った解を与えることがわかった. 3. 非線形性を取り込む種々の方法を考え,シミュレーション実験を繰り返した結果,ベクトル体積弾性率を新たに定義して用いる方法が最も妥当であるという結論に達した. 4. しかし,現在まだ実験結果と十分な一致をみない点が残っている.原因の一つは発射パルスの断面内変化がReichenbergerの実験には示されておらず,これを考慮できない点にある.やはり本研究独自の実験装置を用意し,対応する場所の音圧を正確に実測する必要があると判断するに至った. 5. 実験遂行のため衝撃波駆動ドライバーの製作を新たに業者に依頼した.この装置の完成納入後,弱い超音波パルス発射による音圧観測を種々行っている.数値シミュレーションで必要となる音圧分布の正確な測定にはハイドロホン位置設定に広い自由度が必要なので,現在これを検討中である. これらの成果は電子情報通信学会および衝撃波シンポジウムに計4回発表済みである.
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