研究概要 |
本研究1年目には,Reichenbergerによる電磁的衝撃波発射装置を用いた実験例を取り上げ,筆者の数値シミュレーション手法の妥当性検証を試みた.その結果,水媒質の非線形パラメータ値を従来知られていた値よりもかなり大きく設定すれば実験で得られる衝撃波波形の主パルス部分が本手法による数値シミュレーションでほぼ再現できることがわかった.しかし主パルスの後に続く小振幅の振動部分が実験波形と一致しないという問題点が残った.これに対して本研究2年目には実験で使用されているレンズの実効面積を少し大きめに評価し,更に体積弾性率の非線形項に粒子速度の時間微分に比例する項を追加するという基本方程式の修正を図ると,非線形パラメータ値を特に大きく設定しなくても実験波形とよく合うことが見い出された.そして,主パルスの後に続く小振幅振動部分の波形が実験波形と一致しないことの原因を追究することが残る重要な課題となった.そこで本年度はこの課題を解決すべく,励振波源両端付近の波形あるいは波源の半径方向の振幅や位相の分布に種々修正を加えるなどして検討を重ねた.しかし,あまり良い結果が得られなかった.ところが,励振波源パルスの振動周期を半径方向に少しづつ縮めるという変更を加えてみると,小振幅振動部分が実験波形と非常によく合ってくるという結果が得られた.これは半径方向の外側ほど波形が圧縮されるという音響レンズの集束作用を数値的に実現したことになる.これにより本研究の第1目標であった数値シミュレーションによる非線形衝撃波実験波形の再現という課題が丁度最終年で達成できることとなった.初期の成果は2000年3月の電気学会論文誌(C)掲載されたが,本年度の最終成果は2000年9月開催のIEEE EMBSAsia-Pasific Conf.on Biomed.Eng.および2001年3月開催の超音波医学会研究会で発表するとともに,電子情報通信学会論文誌(A)にも投稿した.
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