研究概要 |
本研究は波長2-5μmに相当するバンドギャップをもつGaSbを基盤とするInAs/InGaSb/InAs Type II超格子を活性層とする赤外レーザの室温発振波長を長波長化するための基礎研究であり、研究期間は平成10,11年度の2年間にわたる。 超格子の作製には水冷式分子線成長法を用いた。この方式が半導体レーザに適用できるかについて,室温における変調ドープ構造によるGaAs成長層の移動度,InGaAs/GaAs歪量子井戸のフォトルミネッセンス測定により従来のものと遜色のない特性が得られることを実証した。 素子設計に関する基礎検討により,クラッド層として(Al_<0.3>Ga_<0.7>)(As_<0.02>Sb_<0.98>)の成長を行った。TeとBeを用いてn型およびp型のクラッド層のドーピング条件,GaSbへのオーミック接触形成の高濃度不純物のドーピング条件を決定した。超格子の設計では,発振しきい電流密度を低滅するため、(In_xGa_<1-x>)Sb量子井戸層とInAs量子井戸層との間の圧縮歪を利用して価電子帯の軽い正孔帯と重い正孔帯の縮退を解いて正孔の状態密度を低滅する構造を計算機シミュレーションにより設計した。In組成xを、構成元素が一様に混ざらない"miscibility gap"の生じない範囲で、超格子活性層を構成するInAs量子井戸、(In_xGa_<1-x>)Sb量子井戸の厚さを決定する必要があり、(Al_<0.3>Ga_<0.7>)(As_<0.02>Sb_<0.98>)をクラッド層と超格子活性層の間に挿入する構造を設計した。 InAs(In_xGa_<1-x>)Sb/InAs超格子活性層および歪補償層の成長と評価を行った。フォトルミネッセンス評価により3.1μmの波長を実現し、赤外域の室温発振波長を長波長化するための素子作製の基礎となる結果が得られた。現在は素子の実用化とレーザ分光への適用に向けての研究を推進している。
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