研究概要 |
今年度は,劣悪な無線通信路上での高品質な通信の実現を主な狙いとして,符号分割多元接続(CDMA)方式における,干渉キャンセラ,誤り訂正符号,パケット通信,セキュリティに関する研究を行った.主要な研究成果は以下の通りである. 1. レプリカの生成に必要なシンボル判定に誤り訂正符号を適用したレプリカ減算型マルチューザCDMA干渉キャンセラの特性を計算機シミュレーションにより評価し,その有効性を確認した.本干渉キャンセラは,反復復号法に基づいて構成されており,レプリカ減算と受信系列の誤り訂正を交互に行うことにより誤り率を小さくすることができる. 2. 並列に繰返し復号を行うターボ符号をCDMA移動通信に適用した場合の特性を計算機シミュレーションにより評価し,その有効性を確認した.また,構成符号の符号器の個数を増やした場合や,パンクチャリングを行った場合の特性についても評価した. 3. 他セルからの干渉波の除去も行うマルチューザ干渉キャンセラについて,サイトダイバーシチ適用時の構成法を提案した.また,その特性を計算機シミュレーションにより評価し,従来の干渉キャンセラより優れた干渉除去能力を持つことを確認した. 4. CDMA移動通信における音声・データ統合型のパケット伝送について,音声品質の劣化を防ぐパケット検出法とデータパケットの送信電力制御法を提案した.さらに,それらを適用した場合の特性を計算機シミュレーションにより評価し,有効性を確認した. 5. 通信誤りの生じやすい無線通信路での利用に適した秘密鍵ストリーム暗号について,セルオートマトンを用いた構成法と線形帰還シフトレジスタを用いた構成法とを比較検討した.その結果,実用上はセルオートマトンの方が有効であると考えられるが,必ずしも本質的な優位性は無いという結論に達した.
|