研究概要 |
高速の浮上状態におけるすきま計測へ展開するための研究を進めた.干渉画像を画面上に固定するための方法として,ワブリング式尾根線凍結法を導入した.また,ガラスディスクの透過光利用の場合に拡張するために,光学系を再構成するとともに,多光速反射シミュレーションを用いて,種々の位相回転効果に起因して生じる擬似的なすきまを補正する手順を明らかにした.さらに本手法により,較正を一切必要としないすきまの測定法が可能であることを示し,実験によりその有効性を確認した. 1.ワブリング式尾根線凍結法の導入:ピエゾアクチュエータを用いて,参照面をディスク面振れに追従させることにより,干渉縞を画面上に固定する方法(フリンジフォローイング)は,高速の測定には不適当であることが判明した.そこで,尾根線が画面上の所定の位置に一致したときのみ画像を採取することとし,この操作を効率的に行うために,参照面をワブリングさせておく方法を導入した.本手法により,±3ドット以内の尾根線が固定できるようになり,精度の向上を実現した. 2.導電性を考慮した多光速干渉シミュレーションの導入:ガラス透過光を用いる場合には,スライダ浮上面の反射光がガラスディスクを再通過することによる位相回転,またスライダ材料の導電性に起因する位相回転などが擬似的なすきまとして重畳されることになる.そこで,多層膜における多光速干渉シミュレーションを定式化して,これらの位相回転量を定量化するとともに,これらを補正して正しいすきまを求める手順を確立した. 3.実験による有効性の確認:1面を無反射コーティングしたガラスとナノ型スライダを用いて,30-50nmすきまの浮上実験を行った.ガラス背面上とスライダ浮上面上の干渉縞の位相関係を,干渉シミュレーション結果に基づいて補正することにより,一切の較正をすることなく,この範囲のすきま計測が可能であることを確認した.
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