研究概要 |
研究計画当初から,初年度を,定位および振動覚の各要素機能をもつ触覚センサの設計・製作に充当しており、ほぼ計画通りに進めることができた. まず定位機能をもつ触覚センサを構成するにあたり,ロボットフィンガの柔かい被覆として透明で針入度50のシリコンゲルを採用し,このゲルの表面に一辺2mm,厚さ0.5mmの正方形反射板を分布配置し接着した.そして,各反射板がゲル層の底から覗けるように,イメージガイド(光ファイバ束)を設置した.ゲル層の横側から光を投じ,全反射効果によって得た各反射板裏側の鮮明なイメージをイメージガイドを通じてイメージセンサにそれぞれ入力し、同時に画像処理して、各反射板4頂点のイメージセンサ座標系における2次元位置を求めた.さらに,これと反射板に関する既知情報(各辺2mm,各頂角90°)から,4頂点の3次元位置情報を復元した.位置決め誤差10μmの評価装置を製作し,復元された3次元位置の検出精度を評価し,X,Y,Zの共分散行列として与えるまでを行った.また,ここまでの計算処理時間は,1.7msであった. 他方,振動覚機能をもつ触覚センサとしては,シリコンゴムを凸間ピッチが12mmで各凸の高さが1.5mmの指紋(断面が凹凸)状に成形し,さらに凸状のゴム内に短冊形状で厚さ30μmのPVDFフィルムを埋め込み,物体の滑りに伴う振動的な信号を高感度に検出する回路を構成した.簡易ウェーブレット解析ツールを用いて,物体が表面を滑ったときの凸状指紋の振動に起因して発生する信号と,指紋をはじいて自由振動をさせたときの出力信号を比較し,これらが,ほぼ同一の高周波インパルス波形を示すものであることを検証した.続いて,指紋の振動に伴うインパルス波形の末尾部に,物体がセンサ表面と離れる場合にのみ現れる固有のはね返り信号波形を発見し,これの有無によって,物体が回転するか滑るかまでも詳細に識別できることを示した.
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