研究概要 |
本研究では,ロボットフィンガの先端に柔軟な粘弾性被覆を取り付け,ロボットハンドによる物体の持ち上げ,搬送や位置姿勢決めの動作に主要な役割を果たす定位覚および滑り振動覚機能を有するヒトの皮膚ほどに柔らかいロボットスキンを構成することを目的とした. 本年度はまず,定位覚機能について,昨年度構成したシステムによる反射チップの位置・姿勢検出精度を向上するために,表面をKOHで粗した縦横同サイズ(2mm),厚さ0.38mmの正方形シリコンチップ片を採用し,6mm間隔で5x5のマトリクス状に分布配置した.その結果,Z方向(深さ方向)の検出精度を与える標準偏差がおよそ30%向上した。つぎに,それぞれから得られる位置・姿勢情報を基に頂角150°をもつ角柱の2側面をロボットスキン表面に押し当てて,それらの面の位置・姿勢推定を行った.推定精度の評価実験を,各面独立に推定するアルゴリズムを用いた場合と2面間の角度が150°であるという拘束条件の下に,ラグランジュの未定乗数法を用いた場合の2通りについて実施した.いずれの場合にも,推定された面の方程式が得られるようになり,その結果,後者の手法を用いた場合が良い精度が得られることが分かった.また処理時間は、画像取り込み時間を除き,前者の場合で4.1msであるのに対し,後者の場合,およそ1sかかり,実時間を重んじるアプリケーションには適さないことが判明した. 他方,滑り振動覚機能については,ロボットスキンに,短冊状のPVDFを直接立て置きに埋め込んで,滑り覚センサを構成したところ,スキン表面を物体が滑るときに,前年度のシリコンゴム上のセンサの場合と同様に高周波インパルス状の信号が出力されることを確認した. そして最後に,上記2研究を統合する目的で,5x5に配列されたシリコンチップの両端位置に短冊状PVDFフィルムを配置したロボットスキンを構成した.
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