研究概要 |
● 弾性波動問題における高速多重極展開法の定式化 2,3次元問題弾性波動問題に取り掛かる手始めとして2次元面外問題を取り扱った。特にいわゆる対角形の多重極展開法について理論的考察を行なった。まず多重極展開とは、円周上におけるDiracのdelta関数のFourier級数展開に他ならないことを見出した。このため、一般にGraffの展開定理を有限項で打ち切って計算を行なうと、解を時間域に戻した時に因果律が崩れることを示した。しかし、因果律の精度は項数を増やすに従って向上するが、波動到達以後の挙動は非常に悪いものになることがわかった。すなわちGraffの展開定理を有限項で打ち切ったものは、時間方向に多項式的な挙動を示すことになり、これを打ち消させて有限で押える操作を有限桁数の計算で行なうことは大変困難であることがわかった。以上の理由によって、当初予定していた方法による動弾性問題の多重極解析は容易でないことが結論された。このため、より数値的に安定な多重極解法を模索し、パネルクラスタリングの見直しや、対角形でないの多重極展開法について展開係数を書き下し、それをコーディングするなどの研究を行なった。 ● 弾性波動問題における高速多重極展開法のプログラミング 上記の事情により研究方向を若干修正した。本研究は断層問題を取り扱うことを目的としていることと、静弾性問題を特殊ケースとして含むことにより、本年は亀裂群の静力学解析を行ない、不連続性を含む超大型問題の解析技術を研究した。特に超大型問題では選点法よりGalerkin法の方が有利であることを見出し、数百個の3次元クラックの相互作用をパーソナルコンピュータ1台で解析できることを示した。
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