研究概要 |
本年度の研究成果は次のようである.先ず,動弾性問題の解析に先立って,3次元Helmholtz方程式のクラック問題における多重極法を定式化した.特に,Wigner 3-j symbolを用いた定式化を検討した.次に,弾性波動問題における高速多重極展開法の定式化として,2,3次元動弾性問題において,高速多重極展開法の定式化を行った.従来行われてきたGalerkinベクトルに基づく定式化は2次元で4個,3次元で6個のモーメントを使用するのに対して,新しい定式化ではモーメントの個数は2次元で2個,3次元で4個となる.さらにM2M,M2L,L2Lの諸式はすべてHelmholtz方程式のものと同じになる.このため,既存の解法より効率の高い定式化を得ることが出来た.さらに,弾性波動問題における高速多重極展開法のプログラミングとしては,2,3次元動弾性問題においてコード開発を行い,パーソナルコンピュータ1台で数十万元規模の問題を解くことが出来るコードを得た.次に,静的な2次元クラック問題の多重極法のコードをMPIを用いてパラレル化し,パーソナルコンピュータクラスタによってスケーラビリティを確認することができた.さらに得られた並列化技術を動弾性問題に拡張することができた.最後に,今後の発展に繋げるために3次元Laplace方程式のクラック問題についてGreengardとRokhlinの新しい多重極法をコード化し,従来の多重極法よりさらに高速な解析が可能であることを確かめた.
|