研究概要 |
本研究では,平成10年度に引き続きアレイ観測記録の解析方法の開発,解析結果の検討,設計への応用として,(1)アレイ観測記録の解析方法の開発,(2)時空間波動特性の検討,(3)設計用の時空間入力波形の提案を目的とした. (1)アレイ観測記録を用いた波動の伝播状況での推定手法の開発・改良 従来の時間領域の解析に加えて,周波数領域での解析手法を新たに開発・改良を行い,従来の方法と比較して,精度や安定性などの長所短所を明らかにした.また,実際に複数地点で観測された地震波形から,波動の反射・透過などがどのように行われているかを推定し,土質の非線形挙動との関連性から論じた.得られた成果を第12回世界地震工学会議で発表した. (2)時空間波形の特性と地震および地盤条件との関係 時空間波形の特性とは,クロススペクトル,相互相関関数,周波数-波数スペクトル,コヒーレンシーなどで表される.まず,本研究で拡充したされた埼玉大学内アレイ観測システムや従来から公開されているアレイ観測のデータベースに基づいて,地震波動の見かけ速度,コヒーレンシーの値の分布などを調べた.地盤の種別,波動の種類,振動の方向などの関数として,クロススペクトル、相互相関関数などを算定した.また,信頼性設計を行う上で重要な最大加速度の空間分布,また,入射波のコヒーレンシーが地震動に及ぼす影響など,地震動の空間分布が耐震設計上問題となる点について詳細な検討を行った.これの研究は確率統計的な要素が強いため,多数の地震と地盤条件における観測記録に基づく統計解析と確率理論の双方から検討を行った.得られた成果の一部は第12回世界地震工学会議で発表した. (3)条件付き時空間波形のシミュレーション方法の開発,改良 現在までに提案されている時空間波形の推定手法を比較検討し,さらに地震動を内挿するという立場から新たな手法の開発を行った.また,これまでに展開した理論を,実際の複雑な現象に適用できるようにするため,理論をより現実に即した形に拡張した.
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