研究概要 |
個人の交通行動は交通行動以外の種々の活動と強い相互作用を持つものであると考えられる.本研究では,交通需要解析を的確に行うためには,個人の生活行動,及び,消費行動を考慮する事は不可欠であるとの認識に基づき,1)個人の生活行動・消費行動と交通行動との関係についての理論的枠組みを提案する事,2)実際の時間利用データ,消費行動データを用いて,提案する理論的枠組みに基づいた交通需要解析ツールを開発すること,の2点を主たる目的として研究を行っている.本年度は,昨年度に構築した各モデルの修正,および,自由目的の地域来訪活動モデルの更なる発展を目指して分析を進めた. 昨年度のモデルの特徴として,消費行動との連関を考慮したより的確な需要解析が期待できる点,モデルの出力に一つである地域別の出費額に基づいた地域経済の観点からの評価が可能である点,等が挙げられる.しかし,適用時に重要となる各目的地域での滞在時間や出費額については,構造方程式モデルを用いて変数間の共分散関係が記述されているに過ぎない.また,交通機関選択が考慮されていない. これらの課題に着目して,本年度は,個人は所得制約と時間資源制約の下で,複数の目的地への滞在時間,出費,来訪頻度を調整する事で,種々の消費活動に伴う総効用を最大化するという行動仮説に基づき,一定期間における個人の利用交通機関別来訪頻度,来訪目的地での総滞在時間・総出費を同時に予測する来訪s動モデルを構築している.未知パラメータの推定に際しては,Mixing Distribution Model及びTobit Modelを適用し,段階的に未知パラメータを推定する方法を用いている.実際のデータに適用した結果,各地域における娯楽レジャー資源や個人属性,交通サービス水準等によって総合的に来訪行動を決定している事を確認している.
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