既往の研究から活性汚泥フロックはポリオウイルスやロタウイルスを高効率で吸着することが報告されている.これは汚泥を構成する微生物及びそれらが創出するバイオポリマーがウイルス粒子を吸着し、マトリクスの中に取り込むからである.この吸着には微生物が創り出すタンパク質系バイオポリマーが深く関わったいると考えられている.この研究の目的はこのタンパク質系バイオポリマーを検索し、その性質を調べ、最終的には人工的にそれを創出する方法を提案する事である. 汚泥より抽出したタンパク質を生化学及びタンパク質化学の分野で広く用いられているFPLCを用いることによりその性質を調べる事を本年度の研究スケジュールとして定めた.汚泥を構成する微生物は多様であり、グラム陰生・陽性の両方の最近が存在するため、タンパク質抽出の方法も超音波、凍結融解、酵素(ライソザイム)、界面活性剤などの様々な粗抽出方法を組み合わせ、塩析させたタンパク質をサイズエクスクルーションクロマトグラフィー(Superdex75 10/30及びHihoad26/60)、イオン交換クロマトグラフィー(ResourceQ)、ハイドロフォービッククロマトグラフィー(HiTrapHIC)によって分画を行った.この分画されたタンパク質は次年度の研究テーマであるウイルスタンパク(特にウイルス表面に突起状に出ているカプシドタンパク質の短鎖ペプチド部分)との特異的親和性を持つ汚泥タンパク質の検索に供される.
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