わが国の食糧自給率は飼料用穀物を含めると30%にすぎない。日本人の健康を保証し、次の世代への持続的発展を可能にするためには、微量有害物質による地球規模での食糧汚染問題への対処施策について検討することが不可欠である。本研究では、環境中での微量汚染物質が生態学的経路を経て食糧に移行する機構とその蓄積、食糧貿易に伴う汚染物質の人為的輸送、等を総合的に評価し、日本人が受ける潜在的な健康リスクを評価するための枠組みを構築することを目指している。 平成10年度は以下の事項について検討した。すなわち先ず、放射性フォールアウトを対象にして構築した、食糧・飼料の貿易を介して日本人が受ける健康リスクの評価モデルを統合し、同モデルによる数値シミュレーションを実施し、日本人の健康リスクを支配する放射性核種の決定経路、決定核種、決定食品等を分析した。次いで、健康リスクを監視し低減するための施策を発見するために、個々の放射性核種毎に構築済みの健康リスク評価モデルに組み込まれているパラメータを、直接観測可能なグループと制御可能なグループとに区分し、それぞれのパラメータの制御が可能であるか否かを分析した。とりわけ市街地表層土壌の重金属等による汚染の実態を広く調査すると共に、放射性核種についての知見を活用して、非放射性物質による日本人の健康リスクを評価するために必要な情報の種類と内容等を系統的に調査した。
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