梁端接合部の脆性的な破壊現象を接合部ディテールと鋼材の破壊靭性値との関連に於いて解明するために、本年度はフィレット部分のVノッチシャルピー吸収エネルギが0℃で21ジュールと低い490N/mm^2級鋼の圧延H形鋼梁(H-500×200×13×24)を用い、以下に示す十字形柱梁接合部試験体の構造実験を実施した。 1. 角形鋼管柱とH形鋼梁の柱梁接合部 柱にBCP325の冷開成形角形鋼管□-450×450×25を用い、H形鋼梁と通しダイアフラム補強形式で接合した柱梁接合部で、梁端接合部のディテールとして工場溶接タイプ及び現場溶接タイプの各1体とした。実験の結果、両タイプ試験体とも梁端ウエブのスカラップ底から梁フランジが脆性的な破壊を起こした。この破壊モードは兵庫県南部地震により被災した梁端接合部に多く観察された破壊モードである。梁端接合部の最大耐力及び塑性変形能力は現場溶接タイプ試験体の方が大きな値を示した。 2. H形断面柱とH形鋼梁の柱梁接合部 柱に490N/mm^2級鋼板を溶接組立したH形断面H-450×450×25×25(ただし、接合部パネルの板厚は40mmとしている)を用い、H形鋼梁と水平スチフナ補強形式で接合した柱梁接合部で、梁端接合部のディテールとして工場溶接タイプ及び現場溶接タイプの各1体とした。なお、柱に使用した鋼板は、C方向のVノッチシャルピー吸収エネルギが0℃で30ジュールと低靭性鋼板である。実験の結果、工場溶接タイプ試験体は溶接止端部より梁フランジが脆性的な破壊を起こし、現場溶接タイプ試験体は溶接ルート部より柱フランジが剥離破壊を起こしている。後者の破壊モードはノースリッジ地震により被災した梁端接合部に多く観察された破壊モードである。梁端接合部の最大耐力及び塑性変形能力は工場溶接タイプ試験体の方が大きな値を示した。
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