本研究では兵庫県南部地震及びノースッリジ地震で問題提起された柱梁接合部の脆性的な破断現象を梁端接合部の継手効率と梁フランジ素材の材料特性との関連に於いて解明することを目的としている。 角形鋼管柱-H形断面梁溶接接合部における梁端接合部の継手効率を評価する上で重要な梁ウエブが負担できる曲げ耐力について三次元弾塑性有限要素法による数値解析を実施し、梁ウエブの曲げ耐力は角形鋼管柱のフランジ幅厚比の影響を大きく受けることを示している。 また、鋼構造柱梁接合部の脆性破壊に関する研究では柱の断面形状(角形鋼管、H形断面)、梁端接合部の接合形式(工場溶接形式、現場溶接形式)及び鋼材の材料特性(低靭性材、高靭性材)を変数とする8本の十字形柱梁接合部の実験を実施した。その結果、兵庫県南部地震及びノースッリジ地震で発生した柱梁接合部の脆性破壊の各破壊モードを再現できた。また、三次元弾塑性有限要素法により破壊の起点となる位置でのひずみ集中を解析し、接合ディテールと破壊モードの関連について考察した。さらに、柱梁接合部が脆性破壊するときの接合部耐力を評価する上で、破壊の起点となる接合部位置の破壊靭性値が重要な指標となることを指摘している。 また、本研究では柱梁接合部の補修技術について実験的に検討することも目的としている。十字形柱梁接合部の初期載荷実験で脆性破壊した接合部を水平ハンチ又は鉛直ハンチにより補修・補強して再載荷実験を実施している。その結果、鋼材の破壊靭性値が高い場合は、柱梁接合部の最大耐力は提案した評価方法により比較的精度良く評価でき、柱梁接合部の塑性変形能力は十分なものであった。これに対して、鋼材の破壊靭性値が低い場合は、試験体の多くは柱梁接合部が早期に脆性破壊を起こして、塑性変形能力は乏しいものであった。
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