激震時に想定される過大入力による高載荷速度や過酷な繰返し荷重履歴を受けて、鉄筋コンクリート(RC)建物の主要耐震構造要素として重要な柱部材が塑性域に入り、劣化していく過程において、主に静的な実験に基づいて設計された靭性のある曲げ破壊モードとは異なる脆性的なせん断破壊を起こすことが考えられる。本研究では、激震時の載荷速度や繰返し荷重履歴がRC素材の性質に与える影響を基礎実験により観察し、RCの構成則を構築する。さらに、激震時におけるRC柱の破壊モードの変化を部材実験により観察し、基礎実験に基づいて開発した構成則を組み込んだ動的非線形有限要素法(FEM)により詳細に解析することにより、その劣化過程を解明し、激震時にも合理的に対応できる耐震設計法を開発するための基礎資料とすることを目的とした。 1)RC素材の力学的性質に与える載荷速度や繰り返し荷重履歴の影響に関する系統的な基礎実験を行った。 既往の研究の調査結果に基づき、研究者によるばらつきの多い諸耐力や破壊モード、最大耐力後の変形性能に重点を置いた。鉄筋については既往の研究結果を利用し、既往の研究での評価の差が大きいコンクリートと付着を実験対象とした。載荷速度は、静的(10^<-5>〜10^<-6>/秒程度)から地震時ひずみ速度レベル(10-3〜10-1/秒)だけでなく、衝撃荷重レベルに近い高載荷速度レベル(1/秒程度)までカバーした基礎実験を行う。その実験結果より幅広い載荷速度に対して定式化された構成則の開発を行う。研究代表者らが開発してきているRC部材の動的非線形FEM解析プログラムに、載荷速度や繰返し荷重の影響を考慮したRC素材の構成則を基礎実験の成果から順次組み込んで追跡を試み、プログラムを検証し、解析の精度の確保とともに、RC柱の破壊モードの変化過程を解析し、分析した。更に、本プログラムを次年度の研究に活用する予定である。 2)付着の載荷実験から次の結果が得られた。 付着強度は、ひずみ速度の対数値に比例して直線的に増大した。直線回帰式から、10^<-3>/secでは付着強度は10.3N/mm^2で1.3倍、更に10^<-2>/secでは付着強度は12.6N/mm^2で1.6倍に上昇した。
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