研究概要 |
これまで,我が国では重ね継手に関して厳しい制約を設けてきた。実験結果のばらつきが大きく,安全率を大きくとらざるを得ないからである。本研究の目標は,重ね継手の3次元的抵抗機構に基づき,適用範囲の広い全数継手設計法を理論的に導くことである。本年は,昨年度の実験(特にダイヤモンドソーによる試験体切断)で得られた3次元ひび割れ状態を画像解析し,付着割裂ひび割れの構造詳細を明らかにした。ひび割れ発生が非対称かつ立体的にねじれた形で生じていることがわかった。 これと平行して,曲げひび割れ位置での鉄筋のすべりが不連続に変化することを考慮した解析方法を開発した。これは,三角梁モデルを用いた平成9年度の解析法の改良である。断面方向の解析は,骨材寸法を考慮し,ボロノイ分割と剛体バネモデルを用いた個別要素法で行った。実験結果と非常によく適合するひび割れパターンが得られた。さらに,破壊力学パラメータを考慮できるような改良を行った。その結果,寸法効果の影響もうまく表現することができた。解析方法の妥当性は,昨年度の実験と比較することにより確認した。さらに,国内外の既往の実験結果との比較も行い,良好な結果を得た。特に,曲げひび割れ位置での鉄筋のすべりが不連続に変化することを考慮することで,実験結果の本質的なばらつきも説明することができた。本年度の研究成果により,理論的設計法への大きな足がかりができたものと考えている。
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