研究概要 |
わが国の若年労働者は減少の一途をたどり,労働意識の変化もあって,建設業界の労働力には苦しい時代の到来が予想される。そのため,近年,鉄筋コンクリート構造でも,施工の合理化を目的としたプレハブ化工法の開発が盛んに行われている。この際,鉄筋をつなぐ方法として,重ね継手が効率的に使用できれば,施工性を格段に高めることが可能になる。 今年度の研究では,鉄筋径と横補強筋量をパラメータとした昨年までの実験を参考に,有限要素法解析を行い,重ね継手における要因(鉄筋ふし形状,鉄筋同士の間隔,鉄筋径,コンクリート強度,骨材寸法,重ね長さ,横補強筋量)が付着強度に及ぼす影響を調べた。また,国内外の実験式および実験データを分析し,新たな強度算定式を提案した。この式は次のような特徴を持つ。 1.重ね長さが小さく,横補強筋量が少ない場合に寸法効果が大きい。ただし,ふしの高さと鉄筋径との比率が高い場合には,横補強筋量が多くても寸法効果が見られる。 2.コンクリート寄与分はコンクリート強度の1/4乗に比例し,横補強筋量寄与分はコンクリート強度の3/4乗に比例する。 3.ふしの高さと鉄筋径との比率が高いほど横補強筋量寄与分が大きくなる。 今回提案した式は,既往の実験データに対する適合性が高く,しかも太い鉄筋まで適用可能である。もちろん,全数重ね継手に適用可能である。したがって,鉄筋コンクリート施工の合理化に寄与できるものと確信している。
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