多種トレーサーガス法では、 (1)測定対象空間の瞬時一様拡散仮定を満足させる空間平均濃度をどの様にして測定するか、 (2)ガス放出後、何時の時点のガス濃度を用いて換気量を算定するのが妥当か、 (3)対象室のガス濃度の設定には、ガス減衰法、ガス一定供給法、ガス定濃度法の3通りあるが、どの組み合わせが、外環境変動時の多数室間換気量の算定を容易にするか、 (4)換気量の算定に際し、ガスの濃度平衡は微分表現と積分表現が可能であるが、微分表現、積分表現、その混合表現の何れが有利になるか、 (5)最小自乗法を用いた場合の妥当な濃度測定データー(逐次的間欠サンプリング)数はどの程度が良いか、 など、幾つかの困難な課題が残されている。 本申請研究の目的は、以上のような多数室換気量の測定に係わる上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の諸懸案事項を実家屋の実測を通じて解決すると共に、高断熱高気密住宅のパッシブ換気計画を可能にするための、外気侵入量及び室間換気の動的な性状を把握することにある。 初年度では、換気量の算定に際し、ガスの濃度平衡は微分表現と積分表現が可能であるが、微分表現、積分表現、その混合表現の何れが有利になるかを確認した。次いで、換気量既知の試験住宅を対象にして、瞬時一様拡散仮定を満足させる空間平均濃度の測定、ガス放出後、何時の時点のガス濃度を用いて換気量を算定するのが妥当かを確認し、高断熱高気密住宅での室間換気量の測定を試みている。
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