本研究の代表者である田村らは、過去の研究により、視覚障害者の外出歩行には、彼らが二次元的メンタルマップを持ちながら歩行する事が有効的である事、二次元的メンタルマップの形成を補助する環境づくりや視覚障害者への訓練が重要である事を報告している。 これを受け平成10年度においては、視覚障害者の二次元的メンタルマップの形成に有利な音環境のあり方を探るべく、視覚障害者の聴覚情報による空間認知の特性について探った。無響室で街中の音環境を再現し、被験者(視覚障害者、晴眼者各5名)にどのような空間であるかを想像してもらった。結果より、道路構成の認知には交通音が大きく寄与している事、その場所のイメージと大きく隔たりのある音(住宅地の大きな車の音等)の存在が空間把握を困難な物にする事などが確認された。 平成11年度には、視覚障害者の外出歩行の訓練プログラム、とりわけ外出に消極的な視覚障害者が外出意欲を持ち、かつ地域を二次元的に把握していく事を目的としたプログラム(オリエンテーリング)を提案し、その評価実験を行った。携帯型触地図を用いて主体的に歩行する事が、視覚障害者の二次元的メンタルマップの構成に対し有効な訓練となりうる事が確認された。一方でレクリエーション性が十分に得られず、歩行に不慣れな参加者には恐怖感、不安感などの心理的負担が報告された。 平成12年度には、外出に消極的な視覚障害者が外出意欲を持ち、かつ地域を二次元的に把握していく事を目的とし、携帯型蝕地図を用いて観光地散策を行い、レクリエーションの面からの視覚障害者の外出歩行支援、訓練を試みた。参加者全員から携帯型触地図の有効性(地域の二次元的イメージが持ちやすい、地図を使って他の人と行き先を相談できる等)が報告された。また、触地図に載せきれない情報(商店の名前等)をどう提供していくかが今後の課題として指摘された。
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