研究概要 |
本年度は以下の(1)〜(3)の項目について研究を行った。 (1) 現行の設計手法の整理: 蓄熱式空調方式のうち,設計法および設計指針が比較的整理されている水蓄熱方式のシステム設計法および容量設計法についてその特徴と現状における問題点を把握した。検討した手法は(1)蓄熱式空調システムの簡略最適設計法,(2)蓄熱効率による槽容量設計法,(3)水温応答係数による槽容量設計法である。 (2) 蓄熱システム実績調査:(1)大温度差水蓄熱システム(大分市事務所ビル)と(2)躯体蓄熱システム(福岡県春日市実験棟)に対して年間の実績調査を行い,システムの運転状況およびシステム動特性の把握を行った。なお,研究計画時に予定していた(3)ダイナミック型氷蓄熱システム(長崎市事務所ビルと(4)コンテナ型潜熱蓄熱システム(北九州市ホテル)の実績調査に関しては,新規の調査は行わず,研究代表者らが1997年度までに収集した過去2年間のデータを今後の解析に使用する。 (3) エネルギーシミュレーションプログラムの開発:(1)温度成層型水蓄熱システム,(2)コンテナ型潜熱蓄熱システム,(3)ダイナミック型氷蓄熱システムの蓄熱槽のモデル化を行い,それぞれ実測値と計算値を比較することによりその妥当性を明らかにした。さらに,シミュレーションにより,そのエネルギー消費特性およびランニングコストについて比較検討した。水蓄熱システムと潜熱蓄熱システムはほぼ同じエネルギー消費特性を持ち,無蓄熱システムよりエネルギー消費量が1割弱増えるが,氷蓄熱システムに比べて1割弱削減できる。水蓄熱・潜熱蓄熱システムは槽容量が空調負荷の4割弱の蓄熱槽を用いることによりランニングコストを無蓄熱システムに比べ12%,氷蓄熱に比べ5%削減できる。
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