研究概要 |
本研究は,蓄熱式空調システムの設計指針および最適運転手法の確立を目的として,各種蓄熱式空調システムの実測調査とその解析・評価を行うとともに、信頼性の高いエネルギーシミュレーションおよび蓄熱式空調システム設計支援ツール開発のための基礎研究を行うものである。平成11年度は昨年度から継続している大温度差水蓄熱システムと躯体蓄熱システムの実測解析を継続するとともに、新たに以下の(1)、(2)の研究を行った。 (1)深夜電力利用潜熱蓄熱式床暖房システムを採用した老人保健施設の冬季実測調査と居住者対象アンケートを行い、本システムの熱的快適性を実証した。さらに、シミュレーションモデルを構築し、福岡の一般的老人福祉施設を対象に最適床仕様や運転方法の指針(最適通電時間および制御用設定温度)を明らかにした。また、冬季の消費電力量と従量電力料金について強制対流式空調システムと比較し、ランニングコスト低減効果を確認した。 (2)昨年度、温度成層型水蓄熱、氷蓄熱など複数の空調システムについてシミュレーションによる比較評価を行ったが、今回、設計支援ツールへの組み込みを前提として汎用性を高めた水蓄熱システムおよび躯体蓄熱システムの評価プログラムによって水蓄熱と躯体蓄熱の省エネルギー性、経済性および環境性について比較検討を行い、システムの設計段階において、どのような要素が蓄熱システムの選択に影響するのかを検討した。現シミュレーション上では、両システムの優劣は熱源機器、蓄熱槽、搬送動力の性能により異なり、これらの特性についてより高い精度でモデル化することが重要である。
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