本年度は、経路認知(記憶と再認)についてのシミュレーション実験を行うための装置として、模型空間の映像に、ワークステーションで生成したCG画像をリアルタイムで合成して表示するシミュレーションシステムの構築をおこなった。すなわち、現有のシミュレーション装置は、縮尺模型の内部に挿入されたモデルスコープによって得られる像をCCDカメラを介して観察者が装着したヘッドマウントディスプレイ(HMD)に映し出すものであるが、本研究では、この模型空間の映像に、ワークステーションで生成したCG画像をリアルタイムで合成して表示するシミュレーションシステムに改良する。そのために、従来のシミュレーション装置と、CG画像生成用のワークステーションの連結、同期調整など、ハード面での調整を完了し、一方ソフト面では、あらかじめ設定されたプログラムに従った動きをする単純な形状の三次元デジタルモデル(人、車など)を試作し、それらを観察者の視点移動、視方向変化とリアルタイムでリンクさせた画像を生成している。ただし、この画像と、モデルスコープで撮影した模型の映像とを画像合成装置によりリアルタイムで合成することには成功しているが、CGによって生成された人や車などのオブジェクトが、模型で作られた建物の後ろ側に回った時に見えないようにする、CGにおけるいわゆる陰線処理にあたる技術が未完成であり、経路探索の心理実験のデータが現段階では得られず、研究成果の発表に至っていない。
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